駅前のレストランの道路にはみ出したテーブルで夕食をとることにする。
付近を見回すと港町だけあってアフリカなどからの出稼ぎ労働者が多い。
キズだらけの上半 身をさらけ出している人がいたりしてなんだか物騒だ。
そんな人たちに囲まれて食 べる食事は・・・こころなしかスープの味もしょっぱく感じた。
スリや泥棒は多いと聞く。安心のためにチェーンロックで荷物をテーブルにくくる。
こんな事は日本では考えられないが・・・
ポンペイ行きの列車では麻薬に泥酔している若者もみかけた。
でもナポリっこは人なつこくて親切なことも事実。
ポンペイで列車を降りそこねたとき、体を張ってドアを開け放してくれたおばさんもいたっけ。
今度イタリアに来ることがあったらナポリから歩き始めよう、そしてナポリから帰ろう・・・
そんなことを考えながら、しょっぱいスープを飲み終えた。
チェンロックをはずし荷物を背負い駅へ向かう。
駅前にはそれとわかる少年が旅行者の周りをうろうろしている。妻が少年をにらみ返す。
気をつけねば、こんな忙しい時にメンドウに巻き込まれないように。
数分後、目の前を猛スピードで逃げていく少年を追いかけている店員の姿が見られた。
本当に、最後まで我々を興奮させてくれるところだった。
でも、そんな世界とも、ミラノ行きの夜行列車のドアが閉まった瞬間に、
一切お別れとなってしまった・・・・・
(1991年・夏)