水面が下がったタイミングで、船頭さんの「せーの!」(と発音しているわけではないが)の一声に合わせてみんな体を仰向けにして寝る姿勢をとる。この瞬間、船頭さんは満身の力をこめ一気にボートを加速させる。
タイミングがずれたり、姿勢が高すぎると岩に頭をぶつけてしまいそうだ。
行き帰りの船が発着するせいで、ここだけ異様に波が高い。 「大丈夫かな?」 ボクは泳ぎがあまり得意でない・・・から心配しているわけではない。 背中のザックのカメラが、いやここまででとった何十本かの撮影済みフィルムが心配だ。水にぬれたりしないだろうか?
「くるんじゃなかった・・・」
いよいよ、ぼくらのボートの番になった。合図にあわせて、前のおばさんの背中を抱くような格好で体をねかせた。気持ちよいくらいなめらかに、体が暗闇へ吸い込まれれていった。