町の中にはたった1本のバス路線がある。それも一日数本。
終点は町で一番高いところにある、教会の前の広場である。
その教会の塔の上からからエンナの町やシチリア島の内陸部が見渡せる。
バスは町なかの細い通りをくねくねと進む。
たった2kmくらいの距離だが、路が細くて路上駐車の車がじゃまでなかなか進めない。
とうとう、進退窮まってしまった。
運転手さんはイタリアのバス特有のパフパフと鳴るクラクションを鳴らし続ける。
5分くらいすると路上駐車の運転手が路地裏から姿を現した。
運転手さんは別だん怒っている様子はない。
それどころか、にこにこ路上駐車ドライバと笑顔で挨拶している。
小銭がなくて四苦八苦していた私たちは、結局ただで終点まで運んでもらった。